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アポロン神殿

かつて「世界のへそ」と考えられていたデルフィ。
そこにあるアポロン神殿は、古代ギリシャの宗教の中心でした。

山の斜面にあるデルフィは、赤い屋根がかわいい村です。
村を抜けてイトスギがまばらに生える山を登っていくと、世界遺産に登録されたデルフィ遺跡があります。

その中のひとつ、大きな石柱と土台がアポロン神殿の跡です。
紀元前4世紀に建造されたこの神殿では巫女の神託が行われていました。
悩みや迷いを抱える古代ギリシャ人たちは、神秘的な体験をするためにこの神殿に集まったのです。

神殿の入り口には巡礼者に向けた3つの格言が書かれていたそうです。
「汝自身を知れ」
「何ごとにも度を過ごすな」
「保証はやがて身の破滅」
(吉田敦彦『ギリシャ文化の深層』国文社)

これは神託を聞く上での注意であったようです。
「神に多くの質問はせず、無理な誓いも立てるな」・・・・・・簡単にまとめるとこうなります。

巫女たちは地面から出てくる甘い蒸気を吸って神と一体化したと言われています。
近年の調査によると、遺跡周辺の土からはエチレンが含まれていることが分かっています。
エチレンはかすかに甘い香りがする、吸い込むと錯乱状態や催眠状態をひき起こすガス。
つまり巫女たちの伝説は、エチレンを吸ってトランス状態になったことを語っているのです。

当時は神託は絶対のもの。
自分の未来を変えるであろうお告げを聞く巡礼者は、どれほど緊張して神殿をくぐったのでしょうか。